「未来をつくる資本主義」 その2
スチュアート・L・ハート『未来をつくる資本主義』より
I=P×A×T
I・・・環境負荷
P・・・人口
A・・・豊かさ
T・・・技術
ある専門家によると、人間活動による環境負荷はこの公式で表すことができるそうです。
つまり、環境負荷を減らそうと思えば人口を減らすか、豊かさのレベルを落とすか、それとも技術革新を進めて省エネ社会をつくるか、そのいずれかということになります。
しかも、人口と豊かさについては現実的に難しいので、結論としては技術革新に頼らざるを得ないということです。
別のいいかたをすると、エコ社会に向けた技術開発は永遠のビジネスネタになり得るともいえます。
一方、世の中を三つの経済視点でみると、貨幣経済、伝統経済、自然経済にわけることができる。
貨幣経済とは、お金を媒体とした社会の営みのこと。
伝統経済とは、農村を基盤とした昔ながらの相互扶助で成り立つ社会のこと。
自然経済とは、地球資源の話です。
課題1
伝統経済に貨幣経済が入り込むことで、さまざまな問題が起きています。
物々交換と相互扶助の社会に「お金」という流動性と保存性の高い媒介が入ることで、「お金で解決」という社会になっていきます。その結果、「儲ける」「お金を貯める」という概念が生まれ、さらには社会全体がドライになると同時に格差も生まれます。
格差の中の弱者は、お金を稼ぐための労働力として子供をたくさん産みます。
その結果、人口増加がますます進み、そこからさまざまな社会問題も生まれています。
人類は全体として100年前より豊かになったことは確かだ。最貧民でさえ当時より教育、医療、食糧に恵まれている。しかし格差は広がり、貧民層の中でもとりわけ伝統経済に暮らす人々の未来は一様に暗い。何の保証もないままに都市へ出稼ぎに行くか、さもなければ村に残り、ますます悪化する経済的・環境的窮状に直面するか、そのどちらかしか選択肢がない。とくにイスラム教世界は危機的状況にある。イスラム過激主義、深まる屈辱感、失業、そして絶望。これらが重なり合った結果がテロリズムであることは、目の当たりにしてきたとおりだ。(P68)
課題2
経済活動の本質は、インプットとして資源を使い、アウトプットとして製品やサービスを創出することで社会全体を豊かにさせることにある。
今、伝統経済の中に貨幣経済が広がることでインプットとしての資源が注目されるようになり、伝統経済圏の人口増加による大量使用が自然経済(資源環境)を脅かすほどになってきている。
農耕地の過耕作、水産資源(食糧としての魚介類)の枯渇、淡水の枯渇、これらは生態系の崩壊にもつながる。
もちろん、こういった環境破壊は温室効果ガスの増加を引き起こし、地球温暖化問題に拍車をかける。
このように、今の地球で起こっているさまざまな問題は、「経済」「社会」「環境」これらが重なり合っていて、それぞれを切り離して議論することができないのがわかります。
これら問題を解決するためには“情報”が有効だとこの本ではいっています。
今まで無知と孤立の状態にあった伝統経済や新興経済は、自分の栗しい立場にほとんど気づかずに済んでいた。ところがデジタル革命を経て、「情報」とともにさまざまな「概念」が世界中の貧困者にもたらされるようになった。これから述べていくように、そうした「知識」は、腐敗政権や環境問題を克服し、公平な発展形態を生み出す可能性と力を彼らに与えるものだ。しかし、グローバルな情報経済には欠点がある。それは、ニヒリズム、アナーキズム、テロリズムなど地球文明の進化を狂わせようとする活動にも利用されてしまうことだ。(P72)
また、ピラミッドの階層別の課題を表(以下)にまとめています。(P74)
上の表の出典元は以下です。
つづく