持続可能な未来に向けて

主にサステナビリティに関することを書いていきます。

ISO14001:2015 6.1.2 環境側面

6.1.2 環境側面

 

組織は、環境マネジメントシステムの定められた適用範囲の中で、ライフサイクルの視点を考慮し、組織の活動、製品及びサービスについて、組織が管理できる環境側面及び組織が影響を及ぼすことができる環境側面、並びにそれらに伴う環境影響を決定しなければならない。

 

最初の段落です。 

まず、環境側面を評価する方法そのものは2004年度版と変わりません。

ただ、ライフサイクルの視点での評価について言及したのは今回からです。

つまり、素材の調達から廃棄もしくはリサイクルに至る一連の系(下図)で評価する必要があります。

2004年度版にも「管理できる環境側面」「影響を及ぼすことができる環境側面」とあるので、解釈のしかたしだいではライフサイクルの視点も従来から入っているのですが、あえて表現することで強調しているわけです。

ただし、これは「考慮し」ですからマストではありません。

”できる範囲で”ということになります。

 

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また、ここでは、活動、製品、サービスによる環境影響を把握し、その原因(環境側面)との因果関係を明確にすることを求めています。

つまり、

われわれが排出する△△△(環境影響)の原因は■■■(環境側面)だ

の”■■■”を導き出すことが、ここでの要求です。

その際には、環境側面を基準にする方法と、環境影響を基準にする方法の二通りがあると思います。

 

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 先の項でも述べたように、ISO14001は、環境に関するリスクと機会をプロセスによって管理するためのツールです。

ですから、環境影響の大きなもの(優先順位の高いもの)から管理していくことになります。

そういった意味では、影響基準での評価をおすすめします。

※影響基準で評価したほうが、その後の著しい環境側面の決定がしやすい。

 

環境側面を決定するとき、組織は、次の事項を決定しなければならない。

a) 変更。これには、計画した又は新規の開発、並びに新規の又は変更された活動、製品及びサービスを含む。

b) 非通常の状況及び合理的に予見できる緊急事態

 

この段落は、最初の段落についての補足です。

適用範囲内での、設備、手順、人員、計画、サービス、生産機種、委託業者、これらの新設(新規採用)や変更があれば、それらに対応しなければいけません。

また、b)では、あらゆる状況を想定することを言っています。

この段落は2004年度版と変わりません。

 

組織は、設定した基準を用いて、著しい環境影響を与える又は与える可能性のある側面(すなわち、著しい環境側面)を決定しなければならない。

 

著しい環境側面の決定です。 

これまでは「手順を構築して」でしたが、今回は「基準を用いて」となっています。

いずれも、評価基準を設定し、その基準にもとづいて決定することに違いはありません。

 

ここで、業務フロー図を作成し、それぞれの工程についてのインプット・アウトプットを洗い出し、そのインプットとアウトプットに数量データを記入して、その数量とあらかじめ定めた著しい環境側面の”基準”に従い点数評価することで著しい環境側面を決定する、といった手順でやられている企業は多いようです。

この方法は、ISOが普及した当初に書籍や研修機関で紹介されていた方法です。

しかし、この方法をすべてに適用しようとすると、あらゆることについて点数基準を設定する必要があります。

それは現実的に不可能です。

それを承知でムリにやろうとすると、環境負荷が大きいもを小さく評価してしまったり、逆に環境負荷が小さいものを大きく評価することになります。

さもなくは、点数基準を無視して感覚で評価するケースもあります。

 

 そこで、これに代わる方法として推奨されるのが、話し合いによる決定です。

「話し合いで決めていいの?」

と思うかもしれませんが、複数の人で、しかも実情をよくわかった人たちが話し合って決めるほうが、ムリな点数評価よりもより現実的です。

実際、私の所属する審査請負会社(認証機関のパートナー会社)でもこの方法を推奨しています。

ただ、一人でやるのは問題です。

一人では客観性が担保できないからです。(その人の主観で判断することになるから)

 

ちなみに、ここで要求されている「基準」(著しい環境側面を決定する際の基準)は、”話し合い”ということになるので、環境マニュアルでは

 

著しい環境側面は、『○○○』(環境影響と環境側面の因果関係を表したシートなど)の内容について、それぞれの項目の関係者らが集まり、話し合いによって決定する。

 

といった文章になります。

 

 

組織は、必要に応じて、組織の種々の階層及び機能において、著しい環境側面を伝達しなければならない。

ここで言いたいのは、関係者が、自らに関係する著しい環境側面を知っている必要がある、ということです。

 

組織は、次に関する文書化した情報を維持しなければならない。

 

 -環境側面及びそれに伴う環境影響

 -著しい環境側面を決定するために用いた基準

 -著しい環境側面

 

注記 著しい環境側面は、有害な環境影響(脅威)又は有益な環境影響(機会)に関連するリスクをもたらし得る。

 

 ここは、文書(手順)の維持についてです。

まず、環境影響と環境側面の因果関係をしましたものが必要です。

それに、その中で特に影響度が大きいものを示す”著しい環境側面”について、それを記載した文書。

さらには、環境側面の中から著しい環境側面を決定したときの”基準”、つまり、点数評価で決定する場合はその”評点の基準”。

また、話し合いで行う場合でもなんらかの基準を設定したほうがいいでしょう。

 

ここで思い出してほしいのが、2015年度版は本来業務を主柱に据えているというところ。

経営目標から割り振られた部門(または個人)の業務に関して想定される環境リスク、これらを管理していくためのEMSです。

ですから、評価すべきは、業務、製品、サービス、設備、これらの経営上の重要度と、それぞれの環境リスクです。

 

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注記では、有害な影響だけでなく、有益な影響についても評価対象であることを述べています。