持続可能な未来に向けて

主にサステナビリティに関することを書いていきます。

「剣菱酒造 田の恵み余さず」 朝日新聞 2022.01.10 朝刊21面

―記事概要

 

神戸市東灘区にある剣菱酒造は500年の歴史を持つ蔵。

もともとは伊丹で酒づくりを営んでおり、かつては江戸の町で下り酒として人気を得ていたが、時代の山あり谷ありで経営権が変わり、今の灘に蔵を移した。

毎年、地域の無事を祈念して年神さまを送るどんど焼き

菰(こも)樽に使われる縄が樹脂製だと燃やすことができない。

どんど焼きはただの焚火とは違う。収穫に感謝して備える菰樽が燃やせない樹脂を使うことに違和感がありました」

その風習を絶やすまいと、社長の白樫政孝さんは縄製造機を購入した。

お酒に直接関係のない機械の購入は、ノスタルジーへの投資ではないかと悩んだ末のことだ。

「蔵が続くように、いま預かっているの意識です。家訓に『止まった時計でいろ』とあり、一時の流行を追ってお酒の味を変えることを戒めてきました」

 

しかし、変わらぬ酒づくりをしようにも世の中の変化には抗えず、社員にも農家出身者がいなくなったこともあって、原料の米がどう育ち、農業という仕事を肌感覚でわからなくなってきている。

また、酒づくりには欠かせない杉樽も職人が絶えつつある。

剣菱では最後のひとりとなる職人を社内に招き入れ、継続できる体制を整えた。

「あきらめるとそこで消えて終わりですが、いま人が育てば次に伝わっていきます」

 

 

―コメント

単に、「お酒」という食品をつくっているのではなく、食文化や食をとりまく生活文化を守る取組みですね。

お金の面だけで見ると、時代に合わせてもっと合理的な方法でつくることもできるのだろうけど、長い目でみるとこのやり方が正しいように思います。

家訓は企業でいえば経営理念、最近の言葉でいうとミッションやビジョンといったところでしょう。

昔から引き継がれる価値観には、理屈では割り切れない核心に迫る「なにか」があるような気がします。