「『悪い物価上昇』に懸念」 朝日新聞 2022.01.19 朝刊7面
―記事概要
18日、原油高などのコストアップを理由に日本銀行が2022年度の物価上昇率の見通しを引き上げた。
残念ながら賃金上昇にともなって物価が上がるいわゆる「好循環」ではない。
このままの状況が続くと、賃金上昇の先行きも不透明中での「悪い物価上昇」が深刻化する懸念がある。
東京都足立区のベニースーパー佐野店の責任者は、食品メーカーや問屋からの相次ぐ値上げ要請に対して、「これだけ幅広い商品の値上げ要請が来ることはこれまでなかった」と嘆く。
円安と原油高が重なり歴史的な値上がりで、国内企業物価指数は前年比4.8%と過去最大の伸び率。
活発な消費に裏付けされた経済成長からくる物価上昇ではなく、コストが膨らんだことによる物価高に日銀の黒田総裁は「強力な金融緩和を粘り強く続け、企業収益の増加や賃金の上昇を伴いながら物価上昇率が緩やかに高まる好循環を目指す」と、理想的な物価上昇を目指す考えを強調。
とはいえ、資源価格の高騰による仕入れ価格上昇に喘ぐ中小企業においては、賃上げするための財源がないのが実情。
これまで2%台前半で推移してきた春闘での賃上げ率も、コロナ禍が始まった20年は1.86%と伸び率が鈍化し物価上昇に追いついていない。
この状況の中、大企業においても賃上げに慎重になることが予想される。
―コメント
コスト増に伴い売価を上げても、消費者側の所得が増えていないので、結局はモノが売れない。
とはいえ生活に必要なものは必要なので、消費者は必要最低限の買い物はする。
地球的にみれば資源のムダは減りますが、作っても売れない会社がでてきて、中には倒産するところもでてきます。
別の言い方をすると、
「これまではたくさんモノを作っていても皆がお金を持っていたのでムダに売れたのが、身入りが減ったことでムダな消費が減り、その結果“余剰”が炙り出された」
ともいえるのではないでしょうか。
それと、“コスト増”については、グローバルに広がる自由経済によって国や地域の賃金や為替の歪が、このようなかたちで市民への皺寄せとなって表れているのでしょう。
ただ、倒産や失業は深刻で、国家の治安や秩序にもつながる問題です。
この世の中、いったい誰が得をしているのでしょうね。