ISO審査員が思うこと(2) ―ISOが疎まれる理由 その2
ISOマネジメントを実践するというのは、企業にとってはかなりの負担です。
ISOマネジメントシステムの流れを一から説明すると、まず企業は社会の状況や業界の動向それに経営のトレンドなどを把握しながら、自社の経営資源をもとに経営理念に沿った戦略を立案することになります。
それと同時に戦略を組織内に浸透させるために、ミッションやビジョンを設定します。
ミッション、ビジョンとくれば、その流れでバリューやクレドといった話もでてきます。
これら前提状況を整えた上で、リスク評価とその対策を練り、それぞれの対策に対して目標を設定します。
目標を設定したらそれに応じた組織体制を制定し、それぞれの部署の役割と権限を明確にする。
そして、それぞれの部署で教育や訓練を行い、必要に応じて手順などを制定しながら運用のベースを整える。
運用を開始するとその状況をモニタリングし、運用の妥当性や適切性を内部監査によって評価する。
その結果、問題があれば是正や予防をしていく。
ISOマネジメントシステムを構築し運用するというのは、簡単にいうとこういうことです。
ただ、こういったことをキッチリとやるのは非常に面倒です。
しかしよくみると、これって実はフツーのマネジメントなんですよね。
はっきり言うと、マネジメントのセオリーに沿って経営ができていれば、ISOマネジメントは自ずとできているわけです。
つまり、ISOマネジメントシステムの運用に苦労する会社は、セオリーに則った経営ができていない会社ともいえます。
ISO審査でいろいろな会社をみてきましたが、多くの会社がISOを負担と感じています。
そういった会社の多くは、責任の所在が曖昧だったり、責任を負うことを避けているように思います。
「経営がうまくいかないのは周辺環境が変わったからだ」
「景気が悪くなったことに伴ってウチの会社の業績も下がった。早く景気が良くなることを願う」
こういった、業績悪化の原因を外部のせいにする会社、すなわち主体性のない会社は「マネジメント」という主体的に組織をコントロールすることに対して敬遠しがちだと思います。
そういう体質の企業はISOを鬱陶しく感じるんだと思います。