持続可能な未来に向けて

主にサステナビリティに関することを書いていきます。

「男女格差、日本『103位』」 朝日新聞 2022.03.03 朝刊9面

―記事概要

 

世界銀行が1日に発表した「女性・ビジネス・法律2022」では、昨年の80位から大幅に順位を下げて130位(190カ国・地域中)となった。

評価対象は、職場や賃金、育児などの8つの分野で法的な格差を分析した。

日本は年金制度で男女の格差はないが、「女性が男性と同じ職種に就けない」など賃金における格差が目立つ。

 

 

―コメント

 

私が知る限りでは、大企業の多くはダイバーシティに取り組むようになったように思います。

ただ、大企業では仕事の細分化が進んでいるのと同時に、”仕事の固定化“も存在します。

つまり、「これは男性(女性)の仕事」「これはどこどこ部門の仕事」というように、仕事が初めから決まってしまっている。

さらに、もともと男性のほうが多いこともあって、男性目線で仕事が作られる。

ルフレッド・チャンドラーが言うように、「組織は戦略に従う」といった課題や戦略を軸に組織や人員採用が行われていれば、女性に仕事の機会が与えられないということはなくなると思います。

なぜなら、今の社会課題は女性に関することが多いからです。

別の言い方をすると、女性の社会進出が遅れているがために、女性に関する課題がいまだ手つかずになっている。

しかも、大企業が本当の意味で変わってくれば、中小企業にもそれが波及する。

これまで男性中心で組織が作られ、そこから男性目線で仕事が作られてきました。

この現状が変われば、少しは順位も上がってくるのではないでしょうか。

「温暖化対策の限界 警告」 朝日新聞 2022.03.01 朝刊3面

―記事概要

国連の気候変動に関する政府間パネルIPCC)の第2作業部会は、このままでは気候変動リスクへの対応が難しくなる「適応の限界」を迎えるとし、適応策を公表した。

昨夏の第1作業部会の報告では、地球温暖化の原因は人類が排出した温室効果ガスであることに疑う余地がないとしている。

現在、気温は約1.1度上昇しており、熱波や豪雨などの極端気象が増加。また生物種が高緯度地域や標高の高い地域に移動したり、中には絶滅した種もいる。

人に直接関係のある事例としては、渇水による食糧や水への影響やサプライチェーンの混乱などがある。

これら影響は途上国や低所得者などの弱い立場の人に顕著で、33~36億人が被害を受けやすい地域に暮らすという。

昨年のCOP26での報告では、各国の現在の政策のままだと今世紀末には2.7度上昇する。

今すぐ適応策を強化すれば被害の軽減も可能だが、1.5度を超えてしまうと手遅れになりかねないと警告する。

 

 

―コメント

 

昨夏からIPCCの第6次報告書の公表が始まりました。

第1作業部会の報告では、これまでの第5次報告書の内容と大きな差はなく、違いといえばその内容が断定された点くらいだったと思います。

とはいえ、その内容はかなり深刻なもので、早急に手立てを施す必要があることにはかわりません。

一方、企業はどうかというと、相変わらず業績最優先のところが多いようです。

私も企業間プラットフォームに所属し、多くの企業を取りまとめる役目を担当していますが、そこで各社の話を聞くと、

「なんだかんだ言って利益優先」

「表向きは環境対策を行っているように見えるかもしれないけど、実際は思ったほど進んでない」

という声をよく耳にします。

また、私の所属する会社でも同じで、

「業界団体がうるさく言ってくるから最低限の対応で凌ごう」

ということを経営層が発言しています。

長年この手の仕事を担当して思うのですが、社内から意識を変えていくことはほぼ不可能に近いので、社会から企業に対して圧力をかけるようにしていくのが一番の早道のような気がします。

そのためにも、市民が知識をつけて賢くなる必要があると思います。

「チェルシー、唐突な『譲渡』」 朝日新聞 2022.02.28 朝刊10面

―記事概要

 

サッカーイングランド・プレミアリーグチェルシーのオーナー、ロマン・アブラモビッチ氏は、クラブの管理運営をクラブの慈善財団の評議員に委ねることを発表。

アブラモビッチ氏は、かつて経済誌フォーブスで「ロシア一の富豪」に挙げられたこともある。

権限譲渡の理由として同氏は、今回のロシアのウクライナ侵攻に伴う世論の圧力からクラブ、選手、スタッフ、ファンの利益を守るためと説明するが、少なくともクラブ売却の意思は見られない。

 

 

―コメント

 

今回のロシアのウクライナ侵攻によってスポーツ界だけでなくあらゆる業界が何等かの影響が出ています。

サプライチェーンバリューチェーングローバル化してしまった今の状況は、国単位でのリスク管理には限界があるので、各企業、各組織、各個人の単位でのリスク管理が必要ですね。

「IR 拭えない地元の懸念」 朝日新聞 2022.02.27 朝刊29面

―記事概要

 

カジノを含む統合型リゾート(IR)の誘致に向けた整備計画の提出期限を2か月に控え、大阪府大阪市和歌山県長崎県はそれぞれ計画をまとめた。

一方、地元住民からは多くの反対の声があるだけでなく、建設予定地の地盤改良や資金調達の問題など、さまざまな課題が横たわる。

松井大阪市長は、「大阪や関西の持続可能な成長のエンジンとなる」と必要性を強調するが、市議会には陳情書が約130件寄せられ、ほとんどが誘致に反対する内容だ。

反対の背景には、建設業者の要望を踏まえ、これまで前例のなかった建設予定地(人工島)の液状化対策費790憶円を市が負担することにある。

自民市議団は、住民投票実施のための条例案を提出したが、維新の会の公明党によって否決された。

 

 

―コメント

 

異常な格差や過度な開発などの問題から、これまでの資本主義のあり方の是非が問われています。

新型コロナウイルスも次々と変異種が出現。

そんな中で、お金のテーマパークともいうべきIR誘致の話というわけです。

若者が、「お金以外のところで価値を見出そう」と訴える横でおじさんたちが、「観光先進国になるにはカジノは必須」と言っているように思えます。

「製造現場に技術者派遣」 朝日新聞 2022.02.26 朝刊22面

―記事概要

 

兵庫県明石市で1980年に創業した三陽工業は、主に川崎重工業のオートバイ部品の研磨を担当してきた。

オートバイ部品は非常に高い品質を求められるために敬遠されがちな仕事だが、三洋工業は進んで引き受けたことで高い技術力を身に付けてきた。

しかし、2008年のリーマンショックで売上が激減。

今のままではやっていけないという危機感から、製造業への派遣事業に目を付けた。

これがあたって、今は売上の約8割を人材派遣で賄う。

18年には後継者問題に苦しむレーザー加工会社を買収し、買収時に1100万円だった赤字を21年には約780万円の黒字に転換した。

井上社長は、「ものづくりのノウハウを生かし、若い技術者の育成を進めて、日本の製造業を元気にしたい」と語る。

 

 

―コメント

 

「日本はものづくり大国」

「ものづくりで会社を大きくする」

といった言葉をよく耳にします。

私の勤める会社も多分に漏れずこのようなことを言っています。

しかし、言葉だけで実際はなにも変わっていません。

「品質改善だ!」と言いながら、クレームは減る気配なし。

社内に出回る品質改善活動のパンフレットや事例集をみると、その理由がなんとなくわかるような気がします。

“品質”ってなに?

“ものづくり”って何を指してるの?

と、言葉の本質が曖昧になっている現状があります。

“品質”イコール“いいもの”。

で、“いいもの”って具体的にどういうもの? どういう状態?

“ものづくり”って何?

機械を動かすこと? 職人技の集大成のことを言ってるの? 手順やノウハウ?

こういった部分が曖昧で、作業者個人の認識に任せたままになっているような気がします。

たとえば、ある人は、「品質のキモは手順にあると思う」と言い、また違う人は「品質を良くするためには、機械操作が肝心だと思う」といったように、末端のとことで意思統一が行われていないのです。

この記事にある三陽工業は、コアコンピタンスを”ノウハウ”や“職人技”と認識し、その育成に経営資源を集中しています。

「日本の製造業は“ものづくり”が核にある」

というのは聞こえはいいですが、そのエッセンスを明確にし伸ばすことをしていかないと、スローガンだけで終わるような気がします。

今の会社で実感しています。

「供給網の監視 大企業義務化」 朝日新聞 2022.02.25 朝刊11面

―記事概要

 

欧州委員会は大企業に対してサプライチェーン内での人権問題の監視を義務付ける法案を発表した。

法案では、子会社を含めて児童労働や強制労働などの人権と、環境汚染や生物多様性の喪失などの環境の面についての問題を把握し、必要な予防や解決策をとることを義務付けている。

対象は、EU内の大企業約1万2800社とEUで活動する海外企業約4千社。

 

 

―コメント

 

近い将来、日本でも同じようなルールができるでしょう。

最近は企業のリスク管理は、その枠を超えてサプライチェーンに広がりつつあります。

環境面ではサプライチェーン製品ライフサイクルの視点でのカーボンニュートラル

人権についてはこれからですが、これもすぐにサプライチェーンでのリスク管理が主流となるでしょう。

ですから、これまでサステナビリティの主管部門はCSR部門であったり環境部門でしたが、これからは調達部門も中心的に動かなければならなくなります。

大企業の調達部門が本腰を入れると、これまで遅れがちだった中層企業も対応せざるを得なくなり、結果的に社会全体が巻き込まれることになります。

ただ、大企業の調達部門は相変わらずコスト削減ばかりに目がいきがちです。

「200年の伝統行事 存続の危機」 朝日新聞 2022.02.24 朝刊1面

―記事概要

 

宮城県松島湾の中で一番大きな島「宮戸島」では、毎年1月14日の小正月「えんずのわり」という行事が行われる。

この行事は、集落に住む小学2年生から中学3年生までの男子が、海岸の洞窟などで6日間共同生活をしながら神社へ参拝したり、地域の家々を訪れて「じいちゃん、ばあちゃん、達者で長生きするように」など声を掛けてまわる行事で、200年以上前から伝わる国重要無形民俗文化財だ。

しかし、この地区は東日本大震災で集落の大半が流され、残った家も大半が高台へ移転したため、来年は小学2年生から中学3年生までの男子が一人となる。

しかし、「一人では無理」との理由で、この1月下旬に自治会は開催中止を決定した。

一部からは継続のために参加対象を拡大する案も出ているが、伝統を重視して反対する者も多い。

 

 

―コメント

 

東日本大震災によって人口が流出したことで過疎化に拍車がかかっているますが、そうでなくとも日本は全体的に人口が減少しているので、こういった問題はいずれ全国各地に広がっていくでしょう。

また、以前どこかで、土俵で力士が倒れた際に医療従事者の女性が立ち入ったことが問題になったように、古くから続く伝統の中には、現代の価値観にそぐわないものもあります。

時代に合わせて内容を変えていくのか、それとも昔から続くスタイルを「伝統」の名の下で頑なに守っていくのか、この「伝統」と「継続」についてはこれから議論されるべき問題ですね。