ダイバーシティへの対応 新聞記事から
2016年8月25日の朝日新聞の朝刊に、労組の連合によるLGBTに関する調査結果の記事が載ってました。
記事によると、全国で仕事をしている20から59歳の男女1千人に調査したところ、8.0%の人がLGBTの当事者だったとか。
この調査では、“20から59歳”と“働く人”と二つの条件の中での調査ですが、対象年齢や仕事の有無に関係なくとも似たような数字になると思います。
この8.0%という数字に、正直おどろきました。
もちろん、程度の差はあるでしょうが、それでも8.0%の人が現状の男女二元論の社会に違和感を感じているわけです。
私の会社はおよそ1000人ほどが社員として働いています。社内協力工場を含めると5000人は越える人が会社の敷地内で働いています。
5000人の8%となると400人。これだけの人がそういう思いでいるわけですから、例外とはいえません。当然、無視できないどころか早急に対応をしていく必要があります。
パナソニックは就業規則をLGBTに配慮した内容に改定したのは、ここ最近では有名な話です。(新聞に自社広告として掲載もしていました)
パナソニック以外でもそういう動きは進みつつあります。
しかし、就業規則の改定といっても、単に文章を盛り込めばいいというものではありません。
社員のマインドもそれに対応していかなければならないし、多様な個性を受け入れるための社員教育も必要になってきます。
通報窓口も強化する必要がでてきます。
そう考えると、「ウチはまだまだ・・・」と対応に消極的になるところも出てきそうです。
ただ、LGBTは個性です。
能力ではありません。
LGBTを差別的に扱うことで彼(彼女)ら能力を生かすことができないのは、組織としてどうでしょうか?
LGBTを問わず人の能力を最大限に生かすこと、つまり経営資源をうまく使ってパフォーマンスを出すことがマネジメントの本質なわけですから、「好き」「嫌い」といった個人的な感情をマネジメントに持ち込んで組織のパフォーマンスの足を引っ張るようなことがあっては、社会に対して悪ですよね。
個性を尊重して、個人が能力を発揮できるために、いま皆が真剣に考えるときだと思います。
それにいち早く取り掛かった組織が、多様な個性と優秀な人材をより多く獲得できるのではないでしょうか。(何をもって”優秀”とするかは、一概になんともいえませんが)
私の会社は、まずは女性社員の制服を廃止すべきだと思います。
LGBTの方の中には、こういったことにも違和感を感じている人もいるでしょうから。
ISO14001:2015 4.4 環境マネジメントシステム
4.4 環境マネジメントシステム
環境パフォーマンスの向上を含む意図した成果を達成するため、組織は、この国際規格の要求事項に従って、必要なプロセス及びそれらの相互作用を含む、環境マネジメントシステムを確立し、実施し、維持し、かつ、継続的に改善しなければならない。
環境マネジメントシステムを確立及び維持するとき、組織は、4.1及び4.2で得た知識を考慮しなければならない。
環境パフォーマンスとは、「環境側面のマネジメントに関連するパフォーマンス(測定可能な結果)」と3.4.11で定義されています。
また、それらを含む意図した成果とは、4.1のところでも出た”組織の目的”に関するものだと理解していいと思います。
つまり、
販売計画や開発計画といった会社が掲げる多くの経営計画の中で環境マネジメントシステムによって管理するものについては、ISO14001を使ったマネジメントシステムを構築し、プロセスの運用管理をベースにした環境側面管理を行うことで環境パフォーマンスの向上を図らなければならない。
また、環境マネジメントシステム(4から10章にわたって書かれた内容、つまり、方針の設定、目標の設定、力量確保、設備機器の準備、手順の設定、管理指標の設定などの目標達成のための一連のプロセスの運用、その結果を検証し、改善するしくみ)の完成度を年々向上させると同時に、環境パフォーマンスについても向上させなければならない。
といった感じですね。
後半の段落は、
その際には、4.1や4.2で決まったことを考慮しなさい。
ということです。
ここでの「考慮しなければならない」は、「考慮に入れなければならない」ではないので、いわゆる「考慮する」で大丈夫です。
4.1と4.2の決定事項一つ一つについて検証し、その結果を記録として残さなければならない、とは言っていません。
あくまでも「考慮する」です。
乱暴ですが、この4.4項をあえて一言でいうと、
経営課題の中で環境に関するものを解決する際にはISO14001を使え、ということです。
ですから、環境マニュアルでは、
「当組織は、環境に関する経営課題を解決する手段として、ISO14001規格を用いる」とでも書いておけばいいですね。
「未来をつくる資本主義」 その2
スチュアート・L・ハート『未来をつくる資本主義』より
I=P×A×T
I・・・環境負荷
P・・・人口
A・・・豊かさ
T・・・技術
ある専門家によると、人間活動による環境負荷はこの公式で表すことができるそうです。
つまり、環境負荷を減らそうと思えば人口を減らすか、豊かさのレベルを落とすか、それとも技術革新を進めて省エネ社会をつくるか、そのいずれかということになります。
しかも、人口と豊かさについては現実的に難しいので、結論としては技術革新に頼らざるを得ないということです。
別のいいかたをすると、エコ社会に向けた技術開発は永遠のビジネスネタになり得るともいえます。
一方、世の中を三つの経済視点でみると、貨幣経済、伝統経済、自然経済にわけることができる。
貨幣経済とは、お金を媒体とした社会の営みのこと。
伝統経済とは、農村を基盤とした昔ながらの相互扶助で成り立つ社会のこと。
自然経済とは、地球資源の話です。
課題1
伝統経済に貨幣経済が入り込むことで、さまざまな問題が起きています。
物々交換と相互扶助の社会に「お金」という流動性と保存性の高い媒介が入ることで、「お金で解決」という社会になっていきます。その結果、「儲ける」「お金を貯める」という概念が生まれ、さらには社会全体がドライになると同時に格差も生まれます。
格差の中の弱者は、お金を稼ぐための労働力として子供をたくさん産みます。
その結果、人口増加がますます進み、そこからさまざまな社会問題も生まれています。
人類は全体として100年前より豊かになったことは確かだ。最貧民でさえ当時より教育、医療、食糧に恵まれている。しかし格差は広がり、貧民層の中でもとりわけ伝統経済に暮らす人々の未来は一様に暗い。何の保証もないままに都市へ出稼ぎに行くか、さもなければ村に残り、ますます悪化する経済的・環境的窮状に直面するか、そのどちらかしか選択肢がない。とくにイスラム教世界は危機的状況にある。イスラム過激主義、深まる屈辱感、失業、そして絶望。これらが重なり合った結果がテロリズムであることは、目の当たりにしてきたとおりだ。(P68)
課題2
経済活動の本質は、インプットとして資源を使い、アウトプットとして製品やサービスを創出することで社会全体を豊かにさせることにある。
今、伝統経済の中に貨幣経済が広がることでインプットとしての資源が注目されるようになり、伝統経済圏の人口増加による大量使用が自然経済(資源環境)を脅かすほどになってきている。
農耕地の過耕作、水産資源(食糧としての魚介類)の枯渇、淡水の枯渇、これらは生態系の崩壊にもつながる。
もちろん、こういった環境破壊は温室効果ガスの増加を引き起こし、地球温暖化問題に拍車をかける。
このように、今の地球で起こっているさまざまな問題は、「経済」「社会」「環境」これらが重なり合っていて、それぞれを切り離して議論することができないのがわかります。
これら問題を解決するためには“情報”が有効だとこの本ではいっています。
今まで無知と孤立の状態にあった伝統経済や新興経済は、自分の栗しい立場にほとんど気づかずに済んでいた。ところがデジタル革命を経て、「情報」とともにさまざまな「概念」が世界中の貧困者にもたらされるようになった。これから述べていくように、そうした「知識」は、腐敗政権や環境問題を克服し、公平な発展形態を生み出す可能性と力を彼らに与えるものだ。しかし、グローバルな情報経済には欠点がある。それは、ニヒリズム、アナーキズム、テロリズムなど地球文明の進化を狂わせようとする活動にも利用されてしまうことだ。(P72)
また、ピラミッドの階層別の課題を表(以下)にまとめています。(P74)
上の表の出典元は以下です。
つづく
ISO14001:2015 4.3 環境マネジメントシステムの適用範囲の決定
4.3 環境マネジメントシステムの適用範囲の決定
組織は環境マネジメントシステムの適用範囲を定めるために、その境界及び適用可能性を決定しなければならない。
この適用範囲を決定するとき、組織は、次の事項を考慮しなければならない。
a) 4.1に規定する外部及び内部の課題
b) 4.2に規定する順守義務
c) 組織の単位、機能及び物理的境界
d) 組織の活動、製品及びサービス
e) 管理し影響を及ぼす、組織の権限及び能力
この項は、適用範囲について要求しています。
2004年度版では、“明確にすること”といった要求でしたが、今回は“どのようにして適用範囲を決定するか”といったところから明確にしておかなければならなくなりました。(aとbの部分)
適用範囲の設定は、4.1で決定した内部および外部の課題と、4.2で決定した利害関係者のニーズと要求ならびに法令などの順守義務、これらを考慮する必要があります。
ちなみに、ISOでいう「考慮する」というのは、「頭の片隅に入れて」といった軽いニュアンスではありません。
これらの項目について「検討する」とか「チェックする」といった意味です。
ですから、4.1で決定した課題、4.2のニーズや期待のすべてを見て「どの範囲でEMSに取り組めば、これらの課題に対して効果的に対応できるんだろうか?」といった検討をする必要があります。
そう考えると、4.1や4.2の結果しだいで適用範囲が変わる可能性がある、ということです。
極端なことをいうと、毎年適用範囲が変わることもあります。
しかし、実際には、年々範囲を広げて活動していくことになるでしょう。
cとdについては2004年度版と同じです。
「敷地」「組織」「製品」これらについて設定すれば大丈夫です。
適用範囲が定まれば、その適用範囲の中にある組織の全ての活動、製品及びサービスは、環境マネジメントシステムに含まれている必要がある。
<EMSの適用範囲>
- 敷地:本社(○○県○○市○○町○-○)、△△工場(△△県△△市△△町△-△)
- 組織:管理本部および生産本部のうち△△工場に所属する全部門、ならびにそれら部門に所属する従業員、契約社員、派遣社員、パート、アルバイト
- 製品:敷地内で生産される全製品(××装置、□□ユニット、及び周辺機器)
環境マネジメントシステムの適用範囲は、文書化した情報として維持しなければならず、かつ、利害関係者がこれを入手できるようにしなければならない。
この部分も2004年度版と同じです。
環境マニュアルに記載するのが一般的だと思います。(しかし、2015年度版は環境マニュアルの作成について要求はない)
そのほかの方法としては、環境報告書やCSR報告書などの発行物、ホームページで“環境への取り組み”といったページで環境活動を報告している会社は、その中で謳うのがいいと思います。
内部監査員教育をしました その2
内部監査員教育を前回の兵庫県の工場につづいて神奈川県の工場でやりました。
今回の対象は8名。
前回に比べるとおとなしい雰囲気でしたが、最後の発表のときの意見は的確だったので、ちゃんと聞いてくれてたみたいでほっとしました。
演習のときにはそこそこできても、実際の監査となるとなかなかうまくいきません。
若手の監査員では部門長に対して厳しい指摘ができない、というのがほとんど。
そのために、監査チェックリストを厳格につくってはいるのですが、どの部門でも通用するように作っているため一般論的になってしまい、部門長はそういう甘い部分を目ざとく見つけてすぐにそこへ逃げ込みます。
かといって、そういう甘い部分を埋めるだけの知識やノウハウを持った監査員もそうそういません。
そりゃそうですよね。
内部監査員とてふだんは自分の仕事をしてるわけで、ISOには年に数回触れる程度ですからね。
また、いくら監査員側に分があったとしても、本業での役職や年齢といった“立場”に正義は屈したりするので、監査は特権を持った人たちで行うべきです。
社長直轄の内部監査部門に環境監査も面倒をみてもらって、その際のチェックリストはISO14001の要求事項に沿ってやるのがいいんですけどね。(何度も言ってますが・・・)
「未来をつくる資本主義」 その1
スチュアート・L・ハート著『未来をつくる資本主義』から
社会や環境の問題が企業運営に深く影響するようになるにつれ、会社の業績と社会的パフォーマンスは必ずしも切り離して考えるべきではないことに経営者たちは気付いていった。それまでは、まず事業によって利益を生み出し、社会貢献活動などを通してその利益を社会に還元しようとしていたが、このように企業活動を二段階に分ける必要はもうない。かつて事業と社会貢献活動の間にあった見えない壁は取り払われ、NGOとの連携、戦略的社会貢献活動などそれまでにないさまざまな社会的事業が提案され始めた。(P35)
従来からの営利追求のための事業と社会貢献活動を切り離して考える時代ではなくなってきた。
企業はこれまで発展途上国の豊富な安い労働力を利用し、富裕層の需要に応えるということを長い間続けてきた。しかし、真の持続可能なグローバル企業と呼ばれるには、世界全体の経済、社会、環境に同時に利益をもたらす競争力のある企業戦略を追求し、実践しなければならない。(P41)
そして、これからの企業は、地球的視野に立って「経済の発展」「社会秩序の維持」「地球環境の保全」、これら三つを同時に実現して、地球の持続的発展に向けて社会をリードしていく必要がある。
企業が環境保護以外に取り組むべき問題は、第一に、もともとクリーンな性質を持った新技術(再生可能エネルギー、生体材料、無線ITなど)の開発、第二に、経済ピラミッドの頂上にいるわずか八億人ではなく、地球上の全六十五億人に資本主義の恩恵を行き渡らせることだ。(P42)
また、その方向性は、クリーンエネルギーの開発と、それらの世界全体への普及でる。
グローバル化の波、多国籍企業の発展、大陸をまたぐ国際的サプライチェーンによって、国家政府の力は失われてしまった。代わりにNGOや市民団体が社会基準や環境基準を監視し、ときには強化する役割を担い始めている。(P47)
多国籍企業の世界経済に占める割合が大きくなり、国家による統治力が弱くなるに従って、国際的な監視・調整役としての役割をNPOなどが担いつつある。
「経済」「社会」「環境」この三つを同時に実現することが、持続可能な発展に向けてこれから社会が取り組むべきことだというこの概念こそがCSVでいわれてることですね。
この考え方を背景から知りたい人には、『未来をつくる資本主義』はもってこいだと思います。
つづく
MNCの影響力
今、スチュアート・L・ハートの『未来をつくる資本主義』を読んでます。
BOPビジネスの原典ともいえる本で、少し古くはありますが、CSR担当者としては一読に値する本だと思います。
その中で、“多国籍企業が世界経済全体に占めるウェイトは年々大きくなる”といった記述があり、それらが世界に占めるGDPの割合は約1/4となっていました。
だから、これからの社会は国家主導ではなく、企業(とりわけ多国籍企業:Multi National Company)がリードする時代というわけです。
ということで、世界銀行のHPから各国のGDPのデータを拾いだし、それとフォーチュン500のデータをもとに、実際にどれくらいのウェイトを占めているのかをみてみました。(下のグラフ:単位はUS$)
ちなみに、500社分のデータを入力するのはたいへんなので、100社分で作ってます。
10.3%
すごいですね。
たった100社で世界のおよそ1割の価値を創造してるわけですから。
すべての多国籍企業を集めると1/4くらいにはなるのかもしれません。