持続可能な未来に向けて

主にサステナビリティに関することを書いていきます。

「強制労働廃止へ 人権指針」 朝日新聞 2022.02.16 朝刊9面

―記事概要

 

政府は海外と取引のある企業に対して、取引先で人権侵害が起きていないかを調べる「人権デューデリジェンス(DD)」の指針を今夏に出す予定。

人権問題が重視される背景には、中国と米国の覇権争いがあり、中には中国の新疆自治区からの綿やトマトの輸入を取りやめる米国企業も相次いでいる。

政府が昨年11月に公表した東証1部・2部上場企業に向けたアンケートでは、人権DDを実施している企業は約半数で、実施していない理由の中で32%と最も多かったのが「人権DDの方法がわからない」。

経産省は、2021年度中に、企業の海外取引先に人権DDの専門家を派遣する事業を開始する。

 

 

―コメント

 

海外は人種や民族が多様なこともあってもともと人権についての問題意識が高いようです。

一方、日本で「人権」といってもあまりピンとこない。

それ以前に、「人権」という言葉を正しく説明できる人がどれだけいるのでしょうか。

とくに戦後の高度経済成長期は、企業と従業員は一心同体でした。

実際、自分と会社を混同している人も多くいます。(未だに)

会社が否定されると自分を否定されたように感じたり、会社のために喜んで身を粉にする人もいます。

こういう場合は、「ビジネスにおける人権」なんて概念はそもそも持ち合わせていない。

ただ、企業内やサプライチェーンで人権問題がないかというと、実はそうではない。

けっこうたくさんあります。

先にも書いたように、そもそも人権意識が育ってないため問題を「問題」と感じてないケースは多いですね。

とはいえ、多くの企業がサプライチェーンのどこかで海外が絡んでいるので、この人権DDは早々に対応しなければならない課題でしょう。

人権DDの定義は、「人権に関する負の影響をコントロールするしくみ」ですから、すでに多くの企業が取り組んでいる環境や品質のリスク管理手法(いわゆるEMSやQMS)をそのまま流用すれば問題ないです。

「強い組織に変革する『真・パーパス経営』 人材を生かす『よりどころ』」 日経ESG 2022年3月号

―記事概要

 

今、多くの企業のCEOが企業経営におけるパーパスを重視している。

この状況はコロナ禍になって増加傾向にあり、特に日本においては7割を超えるCEOがそう考える。

パーパスが求められるようになった理由として、リモートワークになったことで働く人っ達が今の自分を見つめなおす時間ができたからではないか、と一橋大学CFOの伊藤氏は言う。

実際にパナソニックは、経営理念制定当時とは時代も変わり今日的な解釈が必要との思いから、昨年10月に経営基本方針を60年ぶりに改訂した。

また、かつてテレビなどで競合したソニーグループは、吉田氏が新社長就任が就任した18年4月から新たにパーパスを定めた。

ソニー存在意義、パーパスを定義し、それを企業文化として定着させてきたことが私にとっては最も重要な成果だった」と吉田氏は話す。

一方、フランスのダノンは、制定したパーパスが競合他社に比べて見劣りしたことを株主が不満に思い、CEOが解任される事態となった。

 

パーパス経営を実践し、ステークホルダーの期待に応えてきた企業の取り組みから見えてきたパーパス実践のポイントは、以下の3つ。

①パーパスを社員が「自分事化」しやすい言葉で示す

②個人のパーパスと会社のパーパスの重なりを探す

③パーパスと企業価値との関係を「見える化」する

 

 

―コメント

 

経営学者のP・F・ドラッガーは著書『マネジメント』の中で、”自分は何者か”を問い続けることが大事と言っています。

自らの存在意義を明確にしなければ人は集まらないし、集まった人の力が集中しないというわけです。

こういった話が今注目されるようになった背景として、コロナ禍で人に考える余裕ができたからとこの記事は書いてますが、それだけではなく、コロナによってこれまでの生活スタイルが変わり価値観が揺さぶられるようになったことで、従来からの”曖昧な経営”では通用しなくなったからだと思います。

もっというと、取り巻く環境が大きくかわったことによって会社としてボーっとしていられなくなり(余裕がなくなり)、限りある経営資源を集中しなければなくなった。

そのために、方向性を明確にする必要がでてきたのでは。

最近わたしもこの”パーパス経営”のしくみづくりに着手しました。

”ミッション””ビジョン””バリュー”、それに”クレド”の再定義です。

それが終わると、今度はそれらを組織内へ浸透するためのしくみづくりです。

2000人を超える企業でありながらこういうことをするのはわたしのみ。

大変だけど、貴重な経験を積むことができます。

ラッキーだと思います。

 

 

仕事の近況 カーボンニュートラルに向けて

このところ会社では、中長期の温室効果ガス削減計画に関する仕事をずっとしてます。

2030年度目標や2050年カーボンニュートラルに向けての施策を考える仕事です。

CO2排出量実質ゼロというのは排出すること自体がゼロではなく、排出したとしても同等量のCO2を何等かの手段で還元できれば、相殺されてゼロになるという考え方です。

削減策としては、まずは省エネ機器・設備の導入。

それと同時にムダ減らし。つまり業務効率の向上。

その次は、契約している電力を再エネ由来のものに切り替える。

さらには、ガスや石油系の燃料で稼働する設備を電化し、その電力を再エネ由来のもので賄う。

そして最後には空き地や屋根にソーラーパネル

こういったことを考えてプランを作っていくわけですが、如何せん不確定要素がありすぎて施策が無限にできてしまう。

それに、この先どうなるかなんて誰にもわからないので、つまり明確な判断基準がないので数あるプランの中から一つに絞り切れない。

そこで、とりあえずはシナリオプランニングの手法に従ってそれらしい計画を作ろうとしています。

 

はじめてのことばかり。

しかも、誰にも判断できないことばかりなので試行錯誤。

いろいろ勉強になります。

「年4500万羽 殺される雄ひよこ」 朝日新聞 2022.02.13 朝刊4面

―記事概要

 

ドイツでは今年1月から世界に先駆けて採卵鶏の雄の殺処分を禁止する法律が施行された。

卵を産まないうえに食用にも適さないとの理由で殺処分される雄ひよこは、ドイツ国内で年間4500万羽。

ドイツでは2000年ごろから殺処分禁止の気運が高まり、これまで州レベルでの規制だったのが、昨年5月に全国に適用される改正法が議会を通過したが、殺処分せずに飼育し続けるとなると、そこでかかる飼料代などは卵代に上乗せされて消費者が負担することになる。

消費者がどの程度受け入れるかにもよるが、大半は安さに惹かれるとみる。

そんな状況を鑑み、ドイツ養鶏業協会の会長は、規制のない国外から卵を仕入れる業者が増えるのではないかとみている。

ドイツ政府は規制に従い孤軍奮闘する国内の養鶏業者への悪影響を認識し、EU全体に制度を広げるよう働きかけており、フランスやイタリア、オーストリアなどでも殺処分が禁止される方向だ。

一方、採卵用や食肉用といった用途に特化した鶏は不健康だとして両用の鶏を育てるケースもあるが、卵を産む頻度など品種による特性とあいまって、店頭での価格は通常の1.5倍になる。

動物福祉を定着さてるためには、「食べる頻度を落としてでも、健康に育てられた、からだにいいものを食べようと生活を変えていくことが、第一歩ではないだろうか」と農家のウォルフガング・グリメさんは言う。

 

―コメント

 

人間の都合で改造されることは動物の意思を尊重しているとは言い難い。

「動物の生きる権利」の話の行きつく先は、「家畜ってどうなの?」「ペットは許されるの?」といった話になると思います。

となれば動物は本来の姿に戻してあげるべきで、ペットはいなくなり、野生の動物を狩猟することでしか肉を食べる機会はないということになりますね。

「人権尊重 企業価値評価の潮流に」 朝日新聞 2022.02.12 朝刊4面

―記事概要

 

日本貿易振興機構ジェトロ)アジア研究所、世界銀行朝日新聞社が主催するシンポジウムで、人権に関する国際的な潮流と企業価値について専門家たちが意見を交わした。

その中で、人権への取組みを真剣に捉える企業と表面的な理解にとどまる企業に二分されることや、日本は歴史的な経緯もあって人権を狭くとらえる傾向にあることなどが意見としてでた。

政府は2020年10月に「『ビジネスと人権』に関する行動計画」を策定したが、企業の動きは鈍い。これに対して経団連長谷川知子氏は、「国際的に認められた人権の内容と行動計画の理解が進むよう、政府も注力してほしい」と、また世界銀行のカルロス・ブリート上級社会開発専門官は、「環境や人権に配慮する仕組みはあっても実行しなければ意味がない。企業には説明責任が伴う」と述べた。

 

 

―コメント

 

一昨年の秋に当時の菅首相が2050年カーボンニュートラルを宣言しました。

これには業界も機敏に反応し、業界団体などが会員企業に対して温室効果ガスの削減目標の公表を求めるなど、具体的な施策に落とし込んで圧力をかけています。

一方、人権については後回しになっているのか、まったく何も言ってこないのが実情です。

当然、企業としても真剣には捉えていない。

焦っているのは、企業の中でもサステナビリティに関連する部署だけではないでしょうか?

その理由は、人権に対してあまり知識がないことだと思います。

人権問題を被差別部落の問題くらいしか考えておらず、サービス残業ジェンダーの問題が人権に繋がっているとは思っていない人が多い。

その裏には、高度経済成長での成功体験(?)によって「従業員は会社と一心同体」といった意識が根付いたこと、また終身雇用などの制度によって従業員と会社が主従関係になってしまったことがあると思います。

つまり、個人よりも会社、個の幸せよりも会社の成長を優先することで会社は従業員を守ってくれた。

一方、庇護が強かったことで従業員の自立心が育たなかった。

そういったことが日本企業の人権意識の希薄さの原因の一つだと思います。

「錦市場観光『ゴミはお金払って』」 朝日新聞 2022.02.11 朝刊6面

―記事概要

 

旅行大手のJTBは、京都の錦市場商店街とともに観光地のゴミ問題の解決策を探るために、食べ歩きで出たゴミを捨てる際にお金を支払うゴミ箱を設置する取組みをはじめた。

ゴミ箱そばに掲げられたポスターにあるQRコードを読み取り、「ゴミ」に因んだ53円、100円、500円のいずれかを任意で選んで電子マネーで支払う。

集まったお金はゴミの処理費用に回す。

商店街振興組合の事務長は、「ゴミ問題を観光客と一緒考える一つのきっかけとしたい」と話す。

 

 

―コメント

 

日本はゴミを捨てることに対してお金を払うという意識が低いそうです。

わたしも仕事がら廃棄物処理業の審査によく行きますが、この業界は国からの助成金によって成り立っているところがあります。

消費者が資源循環のしくみや実情をもっと深く理解すると、ものを捨てることや捨て方などゴミに対する意識が変わり、お金を支払う習慣が自然と定着するのかもしれません。

しくみを回そうとするのであれば、「見える化」や「啓発」がポイントでしょうね。

そのためにも、「観光客と一緒に考える」というのは面白いと思います。

「少子化の町 消えゆく保育の場」 朝日新聞 2022.02.10 朝刊25面

―記事概要

 

青森県津軽半島の突端近くにある中泊町小泊地区には、保育園や幼稚園はなく、あるのは認定こども園「こどまり」ただ一つ。

人口減少にともない園児も年々減ってきた。

こども減少は収入減を意味し、その中で事業を存続させるためには、様々な役割を担う「多機能化」と地域の子育て支援の両立を図るしかない。

清隆厚生会の理事長は、「待機児童問題を中心に、これまでは東京の取組みを地方に広げてきた。人口減少は地方から先に影響がでる。これからは地方をモデル事業にして都市に広げる方策を、国に考えて欲しい」と話す。

保育所や幼稚園がなくなることは、電気や水道と同じ『インフラ』がなくなることと同じで、『住めない地域』の問題は今後日本各地で起きる問題だ。

 

 

―コメント

 

人口減少は地域の縮小であり、地域経済の縮小は更なる人口減少につながります。

また、町が衰退すると道路インフラなど国土維持についても疎かになり、そうなれば防災面でのリスクが増加します。

この状況は今後日本全体に広がっていきます。

この悪循環を断ち切るためには、少ない人数でも高い収益をもたらす産業が必要。

国が半導体産業を推すのは、そういうところにもつながるからかも。